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SaaS企業のLLMO対策で、先に押さえること
LLMO対策(AI検索対策・AIO対策とも呼ばれます)とは、AIに相談されたときに自社の名前が挙がり、正しく紹介されるようにする取り組みです。
BtoB SaaSの場合、発注者の聞き方はこうなります。「導入シェアが高い勤怠管理システムを5つ比較して」「従業員100名くらいの会社に合うツールはある?」「いま使っている◯◯の代わりになるサービスは?」。検索結果の一覧と違い、AIは数製品だけを名前で挙げ、短い説明を添えます。
2026年9月、この種の質問を5つ用意し、ChatGPT・Claude・GeminiにWeb検索を有効にした状態で投げました。挙がったのはのべ123件の製品です。計測の全文はBtoB SaaS版の実測レポートにまとめています。
カテゴリ名を入れた質問では、3つのAIが同じ製品を挙げた
まず、質問にカテゴリ名を入れた場合です。「導入シェアが高い◯◯システムを5つ比較して」という聞き方をしました。
結果は、3つのAIとも正しいカテゴリの製品だけを挙げました。さらに、3つのAIすべてに共通して登場した製品が3つありました。顔ぶれがほぼ一致していたということです。
これは、ほかの業種を調べたときとは逆の結果です。
- 三軒茶屋の不動産会社を同じ質問で3つのAIに聞くと、共通していたのは1社だけでした(不動産会社のLLMO対策)
- エンジニア採用を頼める人材紹介会社では、3つのAIに共通する会社が1社もなく、ChatGPTとClaudeの重なりも0社でした(採用代行・人材紹介のLLMO対策)
- 都内の美容クリニックでは、ChatGPTが挙げた8件のうち、ほかの2つのAIと重なった院は0件でした(美容クリニックのLLMO対策)
エリアで探されるビジネスでは、AIごとに答えがばらけます。SaaSでは上位が固定されていました。比較記事やレビューサイトが揃っている分野で、3つのAIが同じ情報源を読んでいるためだと考えられます。ただしこれは推測で、因果までは確かめていません。
上位が固定されていることの、裏側
店舗や士業であれば、どれか1つのAIには名前が出ている可能性があります。ばらけているぶん、入り込む隙間もあります。
SaaSはその逆です。どのAIで見ても同じ製品が上位にいるということは、その枠に入っていない製品はどのAIでも挙がりにくいということでもあります。逃げ道が狭い構造です。
カテゴリ名を省いた1問で、44件中42件が別ジャンルになった
5つの質問はすべて、同じカテゴリのSaaSについて聞いたものです。ただし1問だけ、質問文にカテゴリ名を入れませんでした。
「従業員数100名以下の中小企業におすすめのシステムは?」。これに対して3つのAIが挙げた44件を、カテゴリごとに分けたものが下の表です。
| 返ってきた製品のカテゴリ | 件数 |
|---|---|
| 勤怠管理 | 11件 |
| 経費精算 | 6件 |
| ERP・会計 | 6件 |
| 営業支援・CRM | 5件 |
| グループウェア | 3件 |
| 電子契約 | 2件 |
| その他 | 9件 |
| 意図したカテゴリ | 2件 |
出典:AGEO-SCOPE実測(2026年9月、ChatGPT・Claude・Gemini、Web検索を有効化)。製品名とカテゴリ名は伏せています。
44件のうち、意図したカテゴリの製品は2件でした。残りの42件は、まったく別ジャンルの製品です。
「システム」という言葉は、何も指定していないのとほぼ同じでした。この質問文に書かれている条件は「従業員数100名以下」「中小企業」の2つだけです。AIはその2つに合う製品を探し、ジャンルを問わず中小企業向けSaaSを並べました。
直前まで同じカテゴリの話をしていても、結果は変わりませんでした。AIは1つの質問を独立した入力として処理します。人間が読めば文脈から察しがつくところを、察しませんでした。
LLMO対策の一歩目に、分析から改善提案まで
AGEO-SCOPEは、AIが返した回答を原文のまま記録し、どの聞き方で自社が挙がったか、何と説明され、どこにリンクされていたかまで残します。そのうえで、次に手を入れる場所を根拠つきで提案します。
条件が曖昧なほど、AIは候補を広げていた
同じ質問で、もう1つ目についたことがあります。Geminiがこの1問だけで29件を挙げていました。ほかの4問では5〜8件です。
条件が絞られていない質問に対して、AIは候補を広げて答えようとする傾向が見られました。
ここは効果の見方に関わります。広い聞き方で自社の名前が挙がっていたとしても、それが29件のうちの1件なのか、5件のうちの1件なのかで意味が変わります。挙がったかどうかだけでなく、その回答に何件並んでいたのか、何番目だったのかまで見ないと判断できません。
1問だけ、ChatGPTの7件に上位製品が入っていなかった
「人事評価の運用がしやすいツールを探しています」という質問です。これもカテゴリ名は入れていません。
| AI | 挙がった製品数 | うち上位3製品 |
|---|---|---|
| ChatGPT | 7件 | 0件 |
| Claude | 5件 | 3件 |
| Gemini | 8件 | 2件 |
「上位3製品」は、カテゴリ名を入れた質問で3つのAIすべてに共通して挙がった3製品を指します。
ChatGPTが挙げた7件には、ほかの2つのAIで上位に並ぶ製品が1つも含まれていませんでした。代わりに、あまり見かけない名前が並びました。同じ製品名が、表記だけ変えて2回登場するという現象も起きています。
カテゴリ名が入っている質問では3つのAIが揃うのに、抜けると揃わなくなりました。発注者がどのAIを開くかは、こちらでは選べません。1つのAIで確認して「うちは出ている」と判断するのは、この業種でも危ない、ということになります。
「代わりになるツールは?」と聞くと、その製品自身が返ってくる
特定の製品名を挙げて、「代わりになるツールや類似サービスはありますか?」と聞きました。
3つのAIすべてが、指定した製品自身を回答に含めました。「代わり」を尋ねているのに、その製品が比較対象の1つとして並びます。AIが競合を列挙するとき、基準として元の製品を提示する動きがあるようです。
この質問は、ほかの質問より挙がる製品数が多くなりました。Claudeは14件を挙げています。乗り換えを検討している発注者は、こういう聞き方をする可能性があります。
つまり、自社名で聞かれたときの見え方と、競合名で聞かれたときに候補に入るかは別の話です。後者は、自社サイトを見ているだけでは分かりません。
SaaS企業のLLMO対策、どこから手をつけるか
今回の5問から言えることに絞って、順に挙げます。
1. カテゴリ名そのものを、製品ページに書く
カテゴリ名が入った質問では正しいカテゴリの製品だけが返り、抜けた質問では44件中42件が別ジャンルになりました。AIはカテゴリ名を手がかりにしています。
「業務をまるごと楽にするクラウド」のような言い方ではなく、「勤怠管理システム」のようにカテゴリの言葉をそのまま書きます。titleタグ、見出し、本文の冒頭。自社で付けた呼び方しか書かれていないと、発注者が使う言葉と一致しません。
2. 条件の言葉を、カテゴリ名とセットで書く
条件だけの質問でも、「従業員数100名以下」「中小企業」という条件はきちんと拾われていました。条件語は効いています。ただし単独では、ジャンルが散ります。
「従業員100名以下の企業向け勤怠管理システム」のように、条件とカテゴリを並べて書くのが形としては近いです。
3. 自社のカテゴリで、AIが読んでいるサイトを確認する
3つのAIで上位が一致していたのは、同じ情報源を読んでいるためだと考えられます。だとすると、自社サイトだけを直しても届きにくい可能性があります。
AIが回答を作るときに実際に参照したURLは記録できます。業種によってリンク先がまったく違うことは450件のリンクを調べた記事にまとめました。まず自社のカテゴリでどこが読まれているかを見てから、掲載の優先順位を決める順序になります。
4. 競合名での聞かれ方も測る
代替を尋ねる質問では、指定した製品自身が3つのAIすべてで返ってきました。Claudeは14件を挙げています。候補の数が多い聞き方なので、入り込む余地はあります。
自社名の質問だけを登録して測っていると、ここが抜けます。
5. 1つのAIの結果で判断しない
カテゴリ名が抜けた質問では、ChatGPTの7件にほかの2つのAIの上位製品が0件でした。3つを別々に見る必要があります。
そのうえで、1回ではなく続けて測ることになります。7週間・120回の定点観測では、週ごとの数字を見ているだけでは何も起きていないように見え、質問ごとに分けたときに動きが出ていました。
この計測で言えないこと
- 5つの質問を1回ずつ投げた結果です。1回では、実力なのか偶然なのか区別がつきません。
- 対象は特定のカテゴリ中心です。BtoB SaaS全体の傾向とは言えません。
- 上位が固定されていた理由は推測です。比較記事やレビューサイトが情報源になっていると考えられる、という段階までで、掲載すれば挙がるという因果は確かめていません。
- 計測は2026年9月時点のものです。上位の固定が今後も続くとは限りません。
- 製品名とカテゴリ名は伏せています。
よくある質問
BtoB SaaSにLLMO対策は必要ですか?
発注者がAIに製品を相談する場面がある以上、見ておく価値はあります。ただしSaaSは他の業種と事情が違いました。カテゴリ名を入れた質問では3つのAIが同じ製品を挙げ、上位が固定されていました。店舗や士業なら「どれかのAIには出る」ことがありますが、SaaSではその余地が狭いということです。今その枠に入っていない製品ほど、どこが空いているのかを確かめる意味があります。
製品ページにカテゴリ名を書けば、挙がるようになりますか?
それだけで挙がるようにはなりません。今回分かったのは逆のことで、カテゴリ名が質問に入っていないとAIはそのカテゴリの話として扱わなかった、という点です。自社ページ側にカテゴリ名が書かれていなければ、カテゴリ名で聞かれたときに候補として拾われにくくなります。前提条件に近いもので、これを満たしたうえで何が足りないかは製品ごとに違います。
比較サイトやレビューサイトに載れば、AIに出るようになりますか?
保証はできません。今回の計測で言えるのは、カテゴリ名を入れた質問では3つのAIの答えがよく一致していた、という事実までです。比較記事やレビューサイトが情報源になっていると考えられますが、掲載すれば挙がるという因果は確かめていません。AIが回答を作るときに実際に参照したURLは記録できるので、まず自社のカテゴリでどこが読まれているかを見るのが順序だと考えます。
1回測れば十分ですか?
足りません。今回は5つの質問を1回ずつ投げた結果です。AIの回答は日々変わるため、1回では実力なのか偶然なのか区別がつきません。別の業種で7週間・120回続けた記録では、週ごとの数字を見ているだけでは何も起きていないように見え、質問ごとに分けたときに動きが出ていました。