目次
週ごとの数字だけ見ると、何も起きていない
まず、毎週のダッシュボードに出ていた数字です。言及率は、5つの質問を3つのAIに投げたうち、何回名前が挙がったかの割合です。
週ごとの言及率(2026年8月23日〜10月4日)
全期間の平均は20.8%(120回中25回)。9月20日の週のみ2回計測しているため、1つの質問につき合計8回分の記録があります。
13.3%から26.7%のあいだを行ったり来たりしています。上がったようにも下がったようにも見えますが、7週間を通して見ると、ほぼ横ばいです。
この数字だけを毎週眺めていても、何をすればいいかは出てきません。実際、最後の週は13.3%まで下がっていますが、これを「悪化した」と読むべきかどうかも分かりません。
質問ごとに分けたら、100%と0%に割れた
同じデータを、5つの質問ごとに分けます。それぞれ8回ずつ計測しています。
自社エリアで、おすすめの税理士事務所は?
8/8
近隣エリアで、相続税に強い税理士事務所は?
8/8
東京で税務調査に強い税理士事務所は?
2/8
外国人経営者が東京で会社設立をするなら?
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顧問税理士を変えたい。どうやって探せばいい?
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各質問を8回計測し、いずれかのAIが事務所名を挙げた回数。質問文は事務所が特定されない形に書き換えています。
見てのとおりです。2問は8回中8回、2問は8回中0回。中間がほとんどありません。
20.8%という平均は、この5問をならした数字でした。実際には「毎回必ず挙がる質問」と「一度も挙がらない質問」が同居していただけです。平均が意味を持っていませんでした。
そしてこの割れ方には筋が通っています。毎回挙がる2問は、エリア名を含む質問と、この事務所が得意分野として掲げている相続税の質問でした。一度も挙がらない2問は、外国人経営者の会社設立と、顧問税理士の乗り換えです。サイトで打ち出している領域と、挙がる質問が一致していました。
7週間で動いたのは、5問のうち1問
週ごとの数字が動いて見えた理由も、ここで分かります。
100%の2問と0%の2問は、7週間ずっと変わりませんでした。変動していたのは「税務調査に強い事務所は?」の1問だけです。8回のうち2回だけ挙がり、残りの6回は挙がりませんでした。
週次の13.3%〜26.7%という揺れは、この1問が出たり入ったりしていた動きでした。
ChatGPTは40回中0回だった
次に、AI別に分けます。
| AI | 計測回数 | 名前が挙がった回数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| ChatGPT | 40回 | 0回 | 0% |
| Claude | 40回 | 7回 | 17.5% |
| Gemini | 40回 | 18回 | 45.0% |
7週間、5つの質問、40回。ChatGPTでは一度も挙がっていません。
1回や2回の計測なら偶然もありえますが、40回続けて0回はそうではありません。Geminiでは45%、つまり2回に1回近く挙がっているのと同じ事務所の話です。
ちなみにこの事務所は、全AIを合わせた登場回数では計測対象の中で1位でした。2位の事務所が17回、3位が16回のところ、25回です。Geminiだけを見ていれば「うまくいっている」と判断したはずの事務所が、ChatGPTには存在していないことになります。
ChatGPTは、この事務所のサイトを読んでいない
なぜChatGPTだけ0回なのか。AIが回答を作るときに参照していたサイトを調べると、手がかりが出てきました。
この事務所の公式サイトが引用された回数です。
| AI | 自社サイトの引用回数 |
|---|---|
| ChatGPT | 0回 |
| Claude | 5回 |
| Gemini | 14回 |
言及0回と、引用0回。読んでいないから挙げられない、という素直な説明がつきます。サイトの文章をどれだけ整えても、読まれていなければ届きません。
参照先の偏りは、他のサイトでも同じでした。ある税理士紹介サイトはClaudeが14回参照した一方でGeminiは0回、ある大手会計事務所のコラムはClaudeとGeminiが10回以上参照した一方でChatGPTは0回です。同じ質問に答えていても、3つのAIは別々の資料を読んでいます。
AI検索対策の一歩目に、分析から改善提案まで
AGEO-SCOPEは、質問ごと・AIごとの言及率に加えて、AIが実際に読んでいたサイトまで記録します。どこで止まっているのかを切り分けたうえで、次に手を入れる場所を根拠つきで提案します。
出ない2問は、誰が答えているのか
一度も挙がらなかった2問について、AIが何を読んで答えていたかを見ると、構図がはっきりします。
- 顧問税理士を変えたい → 大手会計事務所が運営するコラム(税理士変更の理由とタイミングを解説した記事)、税理士紹介サイト、比較サイト
- 外国人経営者の会社設立 → 東京都の公式ページ、クラウド会計ソフト会社の解説記事、行政書士法人のガイド
どちらの質問でも、AIが読んでいたのは「事務所の紹介ページ」ではなく「解説記事」でした。そして解説記事を書いているのは、多くの場合ライバルです。
実際、ある大手会計事務所は、今回の計測で事務所名として挙がるのではなく、解説記事の出典として16回登場していました。相談者の目に触れる経路が、2通りあるということです。
この2問に入り込もうとするなら、やることは「自社の紹介ページを整える」ではありません。その相談に答える解説記事を自分で書くか、AIが読んでいる媒体に載るかのどちらかになります。言及率の数字だけを見ていたら、この判断には至りません。
AI検索対策の効果は、どこで測るか
7週間分を見てきた結論です。全体の言及率は、効果を測る指標として向いていません。平均が100%と0%をならしてしまうからです。
代わりに、質問を3つに仕分けてください。
- 安定して挙がる質問。すでに取れている場所です。守りに回り、競合が入ってこないかだけ見ます。
- 揺れている質問。あと一歩で安定しそうな場所です。手を入れた効果がいちばん読み取りやすいので、優先して取り組む価値があります。
- 一度も挙がらない質問。まずAIが自社サイトを読んでいるかを確認します。読んでいないなら、サイトの文章を直しても変わりません。読まれているのに挙がらないのか、そもそも読まれていないのかで、打つ手がまったく違います。
そして、どのAIで測るかによっても景色が変わります。今回の事務所はGeminiで45%、ChatGPTで0%でした。1つのAIだけを見て効果を判断すると、逆の結論になりえます。
対策の進め方そのものは「LLMO対策、最初にやるのはサイト修正ではなかった」に、計測ツールを選ぶ観点は「LLMO対策ツールの選び方」にまとめています。
7週間で言えること、言えないこと
正直に線を引いておきます。
- 言えること。質問ごとに、挙がる・挙がらないがはっきり分かれていた。7週間でそれはほとんど動かなかった。ChatGPTは40回中0回で、同時に自社サイトを一度も引用していなかった。
- 言えないこと。これが他の事務所にも当てはまるか。何をすれば0%の質問で挙がるようになるか。そして、挙がったら問い合わせが増えるのか。
最後の点については、45本のGEO研究を整理した2026年のレビューでも、引用がクリックや売上につながる証拠は「非常に低い確信度」と評価されています。AI検索対策をすれば売上が増える、と言える段階ではありません。私たちも含めてです。
いま確かめられるのは、どの質問で挙がっていて、どの質問で挙がっていないか。AIが何を読んでいるか。手を入れた前後で、それがどう動いたか。ここまでです。
この事務所の計測は続いています。0%だった2問が動いたら、追記します。
この記事のデータについて
都内のある税理士事務所の計測記録(2026年8月23日〜10月4日、5問 × 8回 × ChatGPT・Claude・Gemini=延べ120回、Web検索を有効化)。事務所名・競合名・質問文のエリア名は、特定されない形に書き換えています。
Olivier Martinez (Sciences Po), Optimizing Visibility in Generative Engines: A Critical Survey of Generative Engine Optimization (2023-2026), arXiv:2607.14035(2026年7月15日版)
よくある質問
LLMO対策に効果はありますか?
「AIの回答に挙がる状態を作れるか」という意味では、質問によって差が出ます。今回7週間追った事務所では、5つの質問のうち2問で毎回挙がり、2問では一度も挙がりませんでした。一方で「対策すれば問い合わせが増えるか」については、研究レビューでも引用がクリックや売上につながる証拠は「非常に低い確信度」と評価されており、言い切れる段階ではありません。
AI検索対策の効果は、どうやって測ればいいですか?
全体の言及率ではなく、質問ごとに分けて見てください。今回の計測では、週ごとの言及率は13.3%〜26.7%で動いて見えましたが、質問別に分解すると100%と0%にきれいに割れており、7週間で動いていたのは5問のうち1問だけでした。全体の数字だけを追っていると、何が起きているか分かりません。
ChatGPTにだけ出てこない場合、どうすればいいですか?
まずChatGPTが自社サイトを引用しているかを確認してください。今回の事務所では、ChatGPTの引用元に自社サイトが一度も登場していませんでした。読まれていなければ、文章をどれだけ整えても挙がりません。クローラーの設定と、ChatGPTが実際に読んでいた他のサイトへの掲載状況から確認することになります。
効果が出るまで、どのくらいかかりますか?
期間を言い切れるデータはありません。今回の7週間では、週ごとの数字は動いたものの、質問ごとの出る・出ないはほとんど変わりませんでした。判断には、1つの質問につき7〜8回の反復計測が出発点として推奨されています。毎週1回の計測なら、およそ2ヶ月分です。