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採用のLLMO対策で、何を測ったか
LLMO対策(AI検索対策・AIO対策とも呼ばれます)とは、AIに相談されたときに自社の名前が挙がり、正しく紹介されるようにする取り組みです。採用の文脈では、求職者がAIに相談したときに自社が出てくるかということになります。
2026年11月2日、求職者が打ちそうな5つの質問を用意し、ChatGPT・Claude・GeminiにWeb検索を有効にした状態で投げました。3AIとも検索を実行しています。
| 質問 | 挙がった件数 | |
|---|---|---|
| Q1 | エンジニアとして転職するなら、どんな会社がおすすめ? | 16件 |
| Q2 | 飲食業界で働きやすい会社を教えて | 22件 |
| Q3 | 残業が少なく、育児と両立しやすい会社は? | 17件 |
| Q4 | 新卒で入るならどの企業がいい? | 38件 |
| Q5 | さいたま市で正社員の求人を探しています | 17件 |
出典:AGEO-SCOPE実測(2026年11月2日、5問×3AI=15回答、Web検索を有効化)。挙がった会社・サービス110件と、添えられていた出典を分類。
見たのは、名前が挙がったかどうかだけではありません。AIがどこを読んでその会社を挙げたのかです。結論から書くと、企業の採用サイトが出典になったのは、5問のうちQ3の1問だけでした。
「求人を探しています」で、採用サイトは0件だった
まずQ5です。「さいたま市で正社員の求人を探しています」。求職者がいちばん素直に打ちそうな聞き方です。
返ってきたものが、3つのAIできれいに割れました。
| AI | 返したもの | 件数 |
|---|---|---|
| ChatGPT | 個別の会社名(地元の中小企業など) | 5件 |
| Claude | 求人媒体の名前(Indeed、求人ボックスなど) | 5件 |
| Gemini | 求人媒体の名前(Indeed、doda、リクナビNEXTなど) | 7件 |
ClaudeとGeminiは、会社名を1つも返しませんでした。「求人を探すなら、このサイトを見てください」という答え方です。
問題はChatGPTのほうです。会社名は5社返ってきました。ところが出典を開くと、すべて求人媒体の掲載ページでした。
ChatGPTが挙げた5社の出典
- 地元の商店 → 求人情報サイトの掲載ページ
- サービス業の会社 → 同じ求人情報サイトの掲載ページ
- リサイクル関連の会社 → 人材派遣会社のサイト
- 建設関連の会社 → 同じ人材派遣会社のサイト
- 介護サービスの事業所 → 求人媒体の掲載ページ
5社とも、その会社の採用サイトではなく、求人媒体に載っていた情報から拾われています。
Q5の出典17件を数えると、企業の自社サイトは0件でした。
つまり、求人を探す聞き方をされたとき、3つのAIとも求人媒体を読んでいました。違いは、媒体の名前を返すか、媒体に載っている会社名を返すかだけです。採用サイトをどれだけ整えても、この質問には届きません。
同じ構造は不動産でも出ています。物件を探す質問だけ、AIが返したのは会社名ではなくSUUMOやアットホームといったポータルの名前でした。探し物の質問では、AIは媒体に流すようです。
LLMO対策の一歩目に、分析から改善提案まで
AGEO-SCOPEは、AIが返した回答を原文のまま記録し、どの質問で自社が挙がったか、何と説明され、どこにリンクされていたかまで残します。そのうえで、次に手を入れる場所を根拠つきで提案します。
「どんな会社がおすすめ?」に、Geminiは1社も挙げなかった
Q1は「エンジニアとして転職するなら、どんな会社がおすすめ?」。会社を聞いている質問です。
Geminiの回答に、企業名は1つも出てこなかった
Geminiは検索を実行したうえで、会社名を1社も挙げませんでした。返ってきたのは条件の説明です。
- 「月平均残業時間が20時間以内、年間休日が120日以上が目安」
- 「フレックスタイム制度やリモートワーク制度が導入されており、実際に利用しやすい企業がおすすめ」
- 「最新技術への投資と活用」「明確なキャリアパスと研修制度」
会社選びの基準を解説して終わりでした。求職者がこの回答を見ても、応募先は1社も分かりません。
ChatGPTは「大手SIer」を会社名として返した
ChatGPTは6件を挙げましたが、その中に「大手SIer」「外資系IT企業」が含まれていました。会社名ではなく、カテゴリの名前です。
残りも、実在の会社が1社と、転職エージェント3社でした。出典はいずれも転職メディアの記事で、事業会社の採用サイトは0件です。
Claudeは10件すべてが転職サービスだった
Claudeが挙げた10件は、レバテックキャリア、Findy、ビズリーチ、Geekly、paiza転職など、すべて転職サービスの名前でした。事業会社は1社もありません。
「どんな会社がおすすめ?」と聞かれて、3つのAIが返したのは、条件の説明か、カテゴリ名か、転職サービスでした。
新卒の質問では、38件すべてに出典がなかった
Q4「新卒で入るならどの企業がいい?」は、5問で最も多い38件が挙がりました。ClaudeとGeminiが17件ずつです。
並んだのは、総合商社、メガバンク、大手メーカー、航空会社、大手食品。知名度の高い会社ばかりでした。
そして特徴がもう1つあります。38件すべてに、出典のURLが付いていませんでした。
出典がないことの意味
ほかの質問では、AIは会社名にリンクを添えていました。Q4だけ1件もありません。
どこかのページを読んで挙げたのではなく、あらかじめ持っている知識から答えた可能性があります。だとすると、自社サイトを直しても、この質問の答えは動きにくいことになります。
ただし、出典が示されなかったという事実までで、理由は分かりません。
ChatGPTの4件には、厚生労働省と就職情報サイトが混ざっていました。企業を聞かれて、省庁とサイトを返しています。
採用サイトが読まれたのは、条件で聞いた1問だけ
5問で唯一、企業の採用サイトが出典になったのがQ3です。「残業が少なく、育児と両立しやすい会社は?」。
出典14件のうち10件が、挙がった企業自身のサイトでした。採用ページや、働き方を説明しているページです。
| 質問 | 出典に企業の自社サイト |
|---|---|
| Q1 エンジニアとして転職するなら | 0件 |
| Q2 飲食業界で働きやすい会社 | 1件 |
| Q3 残業が少なく、育児と両立しやすい会社 | 10件 |
| Q4 新卒で入るならどの企業 | 0件 |
| Q5 さいたま市で正社員の求人 | 0件 |
Q3とほかの4問の違いは、聞き方が「条件」になっていることです。「残業が少ない」「育児と両立しやすい」という条件に合う会社を探すとき、AIは各社のサイトを読んで判断していました。
逆に言えば、条件が書かれているページを持っている会社が、この質問では拾われます。平均残業時間、育休取得率、復職率、制度の利用実績。数字で書かれていれば、AIが照合できます。
ここが、採用のLLMO対策で唯一はっきりした突破口でした。
Geminiは8社すべてに、同じトップページを貼った
Q2「飲食業界で働きやすい会社を教えて」では、Geminiが8社を挙げました。出典を見ると、8社すべてに同じURLが貼られていました。
しかもそれは記事のURLですらなく、大手ポータルサイトのトップページでした。どの記事を読んだのかが分かりません。
名前が挙がったかどうかだけを見ていれば、この8社は「Geminiに載った会社」に見えます。出典まで開くと、根拠として機能していないことが分かります。
AIが挙げた名前と出典がずれる現象は、ほかの業種でも出ています。注文住宅では、7社の名前に別業種・別県の会社のURLがまとめて貼られていました。
採用担当が、ここから何をするか
今回の110件から言えることに絞ります。
1. 「求人を探す」聞き方は、採用サイトでは取れない
Q5の出典17件に、企業の自社サイトは0件でした。この聞き方をされたとき、3つのAIとも求人媒体を読んでいます。
ここを取りにいくなら、採用サイトの改修ではなく媒体側の掲載内容が対象になります。ChatGPTが挙げた5社は、いずれも求人媒体の掲載ページから拾われていました。
2. 取りにいくのは、条件で聞かれる質問
採用サイトが読まれたのはQ3だけでした。「残業が少ない」「育児と両立しやすい」のような条件で聞かれたときです。
自社の働き方について、照合できる数字がサイトに書かれているかを見てください。平均残業時間、育休取得率と復職率、有給取得率、リモート勤務の実施状況。「風通しが良い」「アットホームな職場」では照合できません。
3. 新卒領域は、現時点では動かしにくい
Q4は38件すべて出典なしで、挙がったのは大手ばかりでした。自社サイトを直しても結果が変わりにくい可能性があります。ここに時間を使う前に、Q3のような条件の質問で測ってみるほうが現実的です。
4. 3つのAIを別々に見る
Q1ではGeminiが1社も挙げず、Q5ではChatGPTだけが会社名を返しました。同じ質問でも返ってくるものが違います。1つのAIで確認して判断すると、実態とずれます。
そのうえで、1回ではなく続けて測ることになります。7週間・120回の定点観測では、週ごとの数字を見ているだけでは何も起きていないように見え、質問ごとに分けたときに動きが出ていました。
この計測で言えないこと
- 5つの質問を1回ずつ投げた結果です。1回では、実力なのか偶然なのか区別がつきません。
- エリアはさいたま市、業界はIT・飲食を中心にした質問です。別のエリアや業界では結果が変わります。
- 特定の企業を対象にした計測ではありません。「自社が出るかどうか」は、自社名と業種で測り直す必要があります。
- Q4で出典が示されなかった理由は分かりません。出典がなかったという事実までです。
- 採用サイトを直した会社と直していない会社を比べてはいません。改修が結果にどう効くかは、この設計では測れません。
- 計測は2026年11月2日時点です。AIごとの傾向が今後も続くとは限りません。
- 個別企業の社名と、出典のURLは伏せています。
よくある質問
採用サイトを整えれば、AIに紹介されるようになりますか?
質問によります。今回の5問では、企業の採用サイトが出典になったのは「残業が少なく、育児と両立しやすい会社は?」の1問だけで、出典14件のうち10件が各社のサイトでした。一方「さいたま市で正社員の求人を探しています」では17件のうち0件で、3つのAIとも求人媒体を読んでいます。採用サイトの改修が効く質問と、効かない質問があります。
求職者が「求人を探しています」と聞いたとき、自社は出てきますか?
今回の計測では、ClaudeとGeminiは会社名を1つも返さず、Indeedやdoda、リクナビNEXTといった求人媒体の名前だけを12件返しました。ChatGPTは会社名を5社返しましたが、出典はすべて求人媒体の掲載ページです。この聞き方で名前が出るかどうかは、媒体側の掲載内容に左右されている可能性があります。
採用サイトに何を書けば、AIに拾われやすくなりますか?
確実な方法は確かめていません。今回分かったのは、条件で聞かれた質問でだけ各社のサイトが読まれていた、という事実です。そこから考えると、平均残業時間、育休取得率と復職率、有給取得率、リモート勤務の実施状況のように、照合できる数字が書かれているかどうかが関係していそうです。「風通しが良い」「アットホームな職場」のような表現は、条件との照合ができません。
新卒採用でもLLMO対策は効きますか?
今回の計測では、効きにくい可能性が見えました。「新卒で入るならどの企業がいい?」では38件が挙がりましたが、そのすべてに出典のURLが付いていません。どこかのページを読んで答えたのではない可能性があります。並んだのも総合商社やメガバンクなど知名度の高い会社ばかりでした。ただし理由までは分かっていません。
どの質問で測ればいいですか?
求職者が実際に打ちそうな形で、自社名を出さずに聞くことです。今回使った5問は、職種で聞く・業界で聞く・条件で聞く・新卒で聞く・地域と雇用形態で聞く、という5つの型でした。条件で聞く質問は採用サイトが読まれていたので、まずそこから自社の状況を測るのが現実的だと考えています。